◆◆実証的なレポートの典型的な構成と注意事項◆◆

◇典型的な構成(西澤「戸塚」論文参照)

1. はじめに
- 「なぜ」という問題規定文で始める。
- なぜその問題が重要なのか。この論文を読む価値があるのかを読者に説得。
2. 仮説
- 検討されるべき命題(「○○は××である。」)を明記。
- 「命題」で示されたことが「なぜ」起こるのか。この「なぜ」に対する理論的な説明が仮説。なお、「なぜ」に対する回答は1つとは限らない。
- それぞれ「○○説」と、仮説一つひとつに名前を付けるとわかりやすい。
- モデル図を活用すること。
3. 実証
- 実証方法について(データと作業定義。ただし、主たる変数以外の作業定義は注・補遺に回す)
- 分析結果
- データの出展・入手先の明記・データの利用を許されたことへの謝辞を注に
4. 分析結果についての考察
- 表のどの数値(あるいは、どの数値とどの数値の比較)から、とのような結論が導き出されるかを文章で説明
5. まとめ
- 議論の要約
- 発見・反省・今後の課題
- 普遍化 ― 政治学のより一般的・普遍的な課題と、当該の研究の関係について、など
6. 文末注
7. 参考文献リスト
8. 補遺
- SPSSのシンタックス(コマンド・ファイル)

◇注意事項

□論文タイトル
・タイトルは、きわめて重要。それで、論文の内容が具体的にわかるように。「政党支持の規定要因」より、「初期社会化が規定する政党支持要因」の方が優れていることに注意。

□本文
・ セクションごとにサブタイトルを設ける
・ TSがきわめて重要(#6において、TSが適切に設定されていない場合、良い点は期待できない)(この意味の分からない人は木下を読むこと。)TSにアンダーラインを引くこと。
・ 質問番号(Q3、問5など)は、本文中には書かない。そもそも、たまたま「問3」となっただけで、何番目の問であったかは、読者には不要な情報。
・ SPSSの変数名は、文中では意味がない。
・ 「SPSSで分析した」も、書く必要はない。 特定のパッケージにしか含まれていない特殊な分析手法の場合を除いて、 用いた統計パッケージを本文に書く必要はない。書くとしたら「注」で。
・ 一方、報告する必要があるのは、用いた統計手法。たとえば、「クロス表分析」・「重回帰分析」など。
・ 引用文献の明記(本文中に、・・・・(西澤 2002, 15)。そして最後に文献リスト。)
・ 「再現性」の担保 — 実証研究のひつとの重要な要件として、同じ分析を読者が再現できるように、その手順についての必要な情報が明記されているかということがある。その基準に照らして、レポー全体を点検すること。

□図表
・ SPSSの出力そのままは、認めない。
・ 図表は、それだけで独立して(つまり、本文を読まなくても)理解できように、必要な要素をすべて備えている必要がある。
- 図表番号
- 図表のタイトル
- 単位(%, N)(なお、%を中心に表を構成するとこ。Nは、補足資料となる。
- 「わからない」などの欠損値は、分析から省くこと。
- 使用したデータの出典の明示。
- クロス表の場合、どちらを100%とした集計かがわかるように。
- クロス表の場合、カイ二乗値(ビアソンだけでよい)とその危険率(「有意/有意でない」の二分法は取らない)。
- 「期待度数」は、クロス表には表記しない。それは、カイ二乗値を算出するのに利用する、「内部情報」。
・ 独立でなければいけないが、一方で、本文中には、その図表の「読み方」が明示的に説明されていなければいけない。「分析の結果は表のとおりである」とだけ書かれて、次に進むレポートがあるが、それは、「どうぞ、ご自分で解釈してください」ということで、説明したことにならない。注目して欲しい数値に網掛けでも施して、「網掛けの数値に注目していただきたいが、その値は××であることを示し、△△との比較から、○○であることが理解できる。」というような「読み方」の説明が不可欠。
・ モデル図も同じ。「モデル図は次のとおり」とだけ書いてあるものがあるが、それでは、説明したことにならない。とりわけ、メカニズム(矢印の部分)の説明が重要。また、因果関係が逆になっていないかにも要注意。
・ そして、インクレイシオ(data ink ratio)に配慮。

□補遺
・「シンタックス」と「出力」とは、異なる。「シンタックス(コマンド)」を先に掲載。それにつづけて、「出力」を。ただし、分析の過程で作成した出力を全て添付することはしない。そして、「・本文中の図xの元になった出力」と、それぞれの出力にタイトルを付けて、読者に見やすいように配慮をすること。